【AI連載小説】潮風がほどく夏 第02話「ガジュマルの落とし物」

今までのお話

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。

第02話 ガジュマルの落とし物

翌朝、透は祖母に頼まれ、集落の共同売店へ歩いた。大きなガジュマルの根元で、自転車から籠を落とした少女が、転がるパッションフルーツを追っていた。

透が黙って一つ拾うと、少女は『助かった! 東京から来た子でしょ?』と屈託なく笑った。小麦色の頬とまっすぐな声に圧倒され、透は名前を聞かれても『相沢……透』としか言えなかった。少女は朝倉凪と名乗った。

凪は自転車を押しながら、集落の犬の名前や近道を次々に教えた。透が相槌しか返せなくても気にしない。沈黙を失敗にしない相手と歩くのは、初めてだった。

売店まで一緒に戻ると、店番の女性が凪へ『また慌てたね』と笑った。凪は失敗を隠さず、透が助けてくれたと紹介する。名前を呼ばれた透は会釈だけで通り過ぎかけたが、思い直し、『こんにちは』と声を足した。

自転車のベルが遠ざかる。透は次に会った時の言葉を、暗くなった窓へ向かって小さく練習した。

次回:第03話へ続く

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