【AI連載小説】潮風がほどく夏 第05話「ハブのいる道」

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第05話 ハブのいる道
夕方、近道を選ぼうとした透を凪が止めた。草むらにはハブがいるから、夜道は明かりを持ち、むやみに入らない。それは島の子どもが幼いころから教わる約束だった。
帰り道、草の中で何かが動くたび、透の肩は跳ねた。凪は笑わず、長い棒で進路を確かめ、舗装路の中央を歩いた。知識があれば、怖さを行動に変えられる。
『怖がるのは悪くないよ。知らないふりが危ないの』。内気な自分まで肯定された気がして、透は『教えてくれて、ありがとう』と凪の目を見て言えた。
家の門が見えたところで、透は自分から『また明日』と言った。凪は振り返り、『もちろん』と手を振る。その一言が、東京の夏休みにはなかった明日の形を作った。
門前で別れた後、透は懐中電灯を取りに戻り、祖父ともう一度外へ出た。徳一は草むらを避ける歩き方を実際に見せた。凪から聞いた注意を自分の言葉で祖父へ話せたことが、その夜いちばんの小さな成功だった。
廊下の明かりを消す前、透は玄関の懐中電灯を確かめた。怖さを準備へ変える方法を覚え始めていた。
次回:第06話へ続く