【AI連載小説】潮風がほどく夏 第06話「黒糖のかけら」

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第06話 黒糖のかけら
徳一の畑でサトウキビの葉が風に鳴った。祖母は黒糖を一片ずつ割り、昔から島の暮らしを支えた甘みなのだと話した。
サトウキビの葉の縁で透の腕に細い傷がついた。徳一は葉が鋭いから長袖がよいと教え、凪は『島のものは優しいだけじゃない』と得意げに言った。
黒糖を舌にのせると、単純な甘さの奥に少し焦げたような深みがあった。透は感想を探し、凪は急かさず待った。待ってもらえると、言葉は意外に自分から出てくる。
凪は一番小さい欠片を透に渡し、『ゆっくり溶かすと長持ち』と言った。沈黙も同じかもしれない、と透は思う。急いで言葉にしなくても、隣にいられる時間がある。
畑仕事を終えるころ、凪は透の傷へ水をかけ、文子から借りた絆創膏を乱暴なくらい丁寧に貼った。顔が近づき、透は息を止める。凪は気づかず、『次は長袖ね』と額の汗を手の甲で拭った。
絆創膏には凪の指の跡など残っていない。それを少し残念に思った自分が恥ずかしく、透は布団をかぶった。
次回:第07話へ続く