【AI連載小説】潮風がほどく夏 第08話「ミキの酸っぱさ」

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第08話 ミキの酸っぱさ
共同売店で凪が差し出した白い飲み物は、米とサツマイモから作るミキだった。とろりと甘酸っぱく、透は思わず目を丸くした。
冷えた瓶の表面を水滴が滑った。透が恐る恐る口をつけるのを、凪は舞台を見るように待っている。酸味に眉を寄せると、予想通り大笑いされた。
『顔に全部出るね』と言われ、透は恥ずかしくなった。しかし凪の前では、うまく取り繕えないことが少し楽でもあった。好き嫌いさえ言えない自分から、一歩だけ離れた気がした。
『苦手なら無理しなくていい』と言われたが、もう一口飲むと不思議に後を引いた。感想を聞かれ、透は『最初びっくりする。でも、たぶん好き』と答えた。凪はなぜか少しだけ頬を赤くした。
空瓶を返しに行く途中、凪は自分も初めて飲んだとき吐き出しかけたと白状した。何でも平気に見える凪にも苦手や失敗がある。その発見で、透の中にあった眩しすぎる少女の像が、少し身近な輪郭になった。
冷蔵庫に残ったミキを、翌朝も飲んでみよう。苦手と好きの境目は、一度決めたら動かない線ではない。
次回:第09話へ続く