【AI連載小説】潮風がほどく夏 第14話「金作原の影」

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第14話 金作原の影
認定ガイドと歩く金作原では、巨大なヒカゲヘゴが傘のように葉を広げた。希少な生き物の暮らす森では、決められた道を外れず、声を抑える。
森の空気は海辺よりひんやりし、濡れた土と葉の匂いがした。ガイドの説明を聞く凪は何度も頷き、透が聞き逃した言葉を後で小声で教えた。
足元ばかり見ていた透が顔を上げると、木漏れ日が巨大な葉を透かしていた。凪と同時に『すごい』と言い、目が合う。短い言葉でも、同じ瞬間を分け合える。
凪は先へ走らず、森の音を聞いていた。元気なだけではない横顔を、透は長く見つめた。『凪って、静かにもできるんだ』と言うと、肩を小突かれたが、二人の笑い声は小さかった。
森を出た売店で、透はガイドへ質問しそびれたことを悔やんだ。凪は代わりに聞こうとせず、『戻って聞く?』とだけ言う。透は迷った末に引き返し、自分の声で植物の名を確かめた。
聞けなかった質問は、自分で戻って確かめられた。その事実を思い返し、透は明日の自分を少し信じた。
次回:第15話へ続く