【AI連載小説】潮風がほどく夏 第11話「大島紬の糸」

image_print

最終更新日時: 2026年8月20日

今までのお話

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。

第11話 大島紬の糸

祖母の知人の工房で、二人は大島紬を見せてもらった。泥染めとテーチ木の染料を重ね、締機で染め分けた糸を、模様が合うよう根気強く織る。

工房では、糸一本のずれを指先で直す静かな時間が流れていた。凪も珍しく口数を減らし、職人の手元を見つめる。織物の模様は近くで見るほど細かかった。

透が礼を言うと、職人は『また見においで』と答えた。ただそれだけのやり取りを、凪は帰り道まで嬉しそうに話した。透は照れながらも、成功を否定しなかった。

何度も積み重ねた手間が、光の角度で変わる深い黒になる。透は会話も同じだと思った。急に上手にはなれなくても、一言ずつなら模様になる。帰り際、工房の人へ自分から礼を言った。

工房を出た後、凪は『透の声、ちゃんと聞こえてたよ』と言った。透は褒められると否定する癖を飲み込み、『かなり小さかったけどね』とだけ返す。できたことを消さずに受け取るのも、練習の一つだった。

机には工房でもらった糸が一本ある。細くても切れずに続く糸を見ながら、透は明日の挨拶を考えた。

次回:第12話へ続く

今までのお話

タイトルとURLをコピーしました