最終更新日時: 2026年8月22日

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第13話 油そうめんの昼
徳一が畑仕事を手伝った二人に油そうめんを作った。茹でたそうめんを野菜や豚肉、だしと炒め絡める、島の気取らない家庭料理だった。
畑では汗が目に入り、慣れない鍬が土に弾かれた。凪は働き者だったが、調子に乗って泥に足を取られた。透が先に笑うと、凪は土のついた手で追いかけてきた。
祖父母の食卓で、透は東京の学校の話を少しした。教室の隅が落ち着くこと、昼休みに本を読むこと。凪は『本の話なら聞きたい』と言い、透の世界にも入口を作った。
凪が透の働きを祖父母に面白おかしく話す。普段なら恥ずかしくて止めるところを、透も失敗談を一つ付け足した。食卓に笑いが増え、自分の話で誰かが笑うことを初めて嬉しいと思った。
食器を運ぶ透の背中へ、文子が『よく笑うようになったね』と声をかけた。本人にはわからなかった変化を指摘され、透は箸を落としかける。凪は得意げだったが、自分のおかげだとは言わなかった。
居間からまだ祖父母の笑い声が聞こえる。そこに自分の声も混じっていたことが、透には嬉しかった。
次回:第14話へ続く


