【AI連載小説】潮風がほどく夏 第29話「言えなかった言葉」

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最終更新日時: 2026年9月5日

今までのお話

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。

第29話 言えなかった言葉

最後の夜、八月踊りの輪に透は自分から入った。唄と太鼓の間で凪を見つけ、胸に浮かんだ『好き』という言葉を何度も飲み込んだ。

踊りの輪は少しずつ大きくなり、知らない人の声まで夜空へ上がった。透は初日の自分なら、遠くから眺めるだけだったと思う。

凪と並んで歩く帰り道、二人の影が街灯の下で近づいては離れた。言葉にしなかった気持ちは曖昧だったが、曖昧なまま大切にしてよいものもある。

けれど踊りの後、『凪に会えてよかった』とは言えた。凪も『私も。透が来てよかった』と答える。言えなかった一語が、二人の間で明るく残った。

家の近くで別れる時、透は凪を呼び止めかけた。しかし、好きという言葉で別れの夜を困らせたくなかった。凪も何か待つように振り返り、結局『明日、空港で』とだけ言う。その続きは二人の表情に残った。

眠りにつく直前、言えなかった一語を心の中で唱えた。次の夏まで、その答えを急がなくてもよかった。

次回:第30話へ続く

今までのお話

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