最終更新日時: 2026年8月28日

この作品はフィクションです。登場人物・出来事は創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。文化・風習の描写には地域差や家庭差があります。
第21話 停電の星
夜、電気が消えると家は闇に沈んだ。風が弱まった短い時間、窓から見えた星は東京で見るより多かった。
停電すると、冷蔵庫も時計も一斉に黙った。文子は安全な灯りを選び、徳一はラジオで情報を確かめた。短い星空の時間を終えて雨戸を閉め直すと、大人たちの落ち着きが家の柱のように感じられた。
凪は懐中電灯を挟んで座り、『透が帰ったら静かになるな』とつぶやいた。透は返事を探したが、『僕も、凪がいないと困る』しか言えない。その不器用な言葉を、凪は笑わず大切そうに受け取った。
『困るって何?』と凪が聞く。透は答えられず、懐中電灯の輪に手をかざした。友達としてなのか、それ以上なのか。名前をつけるには、夏が速すぎた。
風雨の音で眠れない透へ、凪から短いメッセージが届いた。『起きてる?』。透が『起きてる』と返すと、それ以上の会話はなくても心細さが薄れた。同じ嵐を別々の家で待っていることが、細い糸のように二人をつないだ。
画面に並んだ二つの『起きてる』が、暗い部屋の灯りになった。透は風が弱まるのを待った。
次回:第22話へ続く



